なぜ、今フィンランドなのか?

今年、世界で一番幸福な国に選ばれたフィンランド。でも「フィンランド」と聞いて地図でぱっと指をさせる人は多くはないだろうし、ムーミンやマリメッコの国だと聞いても、あまり具体的なイメージは浮かばないかもしれません。でも今、ものすごくフィンランドの人々の生き方が注目される理由があると思うんです。それがやっとわかったのは、わたしが3度目にフィンランドへ訪れた時でした。

サウナとの出会い

長い間アメリカに住んでいたこともあり、日本を窮屈に感じていて、たぶん日本に住むことはないかもとずっと思っていました。まさかのサウナとの出会いをきっかけに、13年ぶりに日本に住むことになるとは。サウナは心の暗い部分を明るくに変え、身体の重さを解放してくれる。そんなサウナのおかげという部分がすごく大きいと思うのですが、いつのまにか日本がちっとも窮屈に感じなくなっていました。

サウナを知ったことで、わたしの「何を幸福と思うか」が大きく変わりました。それは場所や環境が決めるのではなくて、自分が決めること。だから日本が窮屈ではなくなったんじゃないかと思います。サウナを知ったから出会えた人たち、見られた景色、体験できたたくさんの気持ち良さのおかげです。そのうち、こんなにも心と身体を優しくしてくれるサウナを愛するサウナ大国フィンランドは一体どんな国で、その国に住むのはどんな人たちなんだろうと、観光ではなくフィンランド人の「幸せ」の形を見に行きたいと思うようになりました。

フィンランド人とサウナ

フィンランドには約330万のサウナがあると言われています。人口が約550万人なので、例え「これから国にいる人全員、せーのでサウナに入ってください」と無茶ぶりしても、フィンランド人たちはたぶん難なくこなせてしまいます。このサウナの数を見れば、フィンランド人にとってサウナがいかに必要不可欠なものであるかはすぐにわかりますよね。

そしてサウナ同様、フィンランドに多く存在するのが湖。「1,000の湖がある国」と言われているが、本当は1,000どころの話ではなく、なんと18万8,000も湖があるそう。フィンランドのサウナは湖畔に建っていることが多く、サウナと湖(もしくは海)はセットなのだなと感じます。サウナで温まった体で冷たい湖に飛び込むと、脳内ホルモン・エンドルフィンが放出されると言われていて、身体中の血流が良くなり、脳に酸素が行き渡る。そして心と身体が高揚感で満たされる仕組みらしいです。ただなんとなく気持ちがいいと思っていたけれど、やっぱりこういうことなんですね。

そんなサウナだらけのフィンランドを3回目に訪れたとき。森のスモークサウナで体を芯まで温めてから飛び込んだ冷たい湖に浮かびながら、わたしはボーッと考えていました。「もしかするとフィンランド人はこうして心と身体で感じる幸福を知っているからこそ、世界で一番幸福な国を作れているのかもしれない」と。もし物を買うことで得られる喜びやキャリアで得られる達成感で幸福度を決めていたら、それは浮き沈みのある幸福だし、心と身体が喜ぶことを感知する力がにぶってしまう気がする。何を幸せと思うか、それは心と身体が自然と感じることにゆだねるとわかるのかもしれない。

フィンランドの内側へ

日本で建物の中にあるサウナに入り、チラーで調節された冷たい水風呂でわたしが感じていた心と身体に駆け巡る高揚感と解放感。本場フィンランドでは、森の中にあるサウナに入り、湖に飛び込みそれを感じる。森へ行き、裸になって汗をかき、湖に入るというのはとても原始的なことのようだけれど、これこそ自分の身体が「生きてる!」と感じられる方法なのかもしれない。サウナが好きでサウナに通っていると、建物の中のサウナと水風呂ではなく、やはりフィンランドという国へ行き本当のサウナを体験したくなってくるものです。

海外旅行というと、観光名所や有名スポットへ行き、鑑賞して写真を撮ったり、そしてお土産を買い、おいしいレストランやカフェを巡るなどがスタンダードな行程だと思います。もちろんわたしも1度目のフィンランド・ヘルシンキでは初めて見るキリッとした街並み、レストラン、カフェ、そしてシンプルでオシャレなデザイン、すべてに心躍りました。1度目はフィンランドの外側をよそ者として見ていたような気がします。

2度目のフィンランドではヘルシンキを飛び出してヌークシオ国立公園のサウナに入り、初めて湖に飛び込んでみました。そしてオーロラを見に飛行機でラップランドへ。結局オーロラは見られなかったけれど、シーンと静まり返った真っ暗な森の中でただひたすらオーロラの出現を待っていたのは、特別な体験でした。大きな自然に触れたことで、フィンランドの内側を見られた気もしました。

そして3度目に行ったフィンランドでは観光はゼロ、街へは一切行かずひたすら湖畔地方のサウナ巡り。タンペレにあるフィンランド最古の公共サウナで地元の人たちと一緒に汗をかきタオル一枚で休憩している時、そしてユヴァスキュラの森でピンク色の夕焼けで染まった湖に飛び込んだ時には、フィンランドが内側に招き入れてくれたような気がしました。

体験をしに行く国、フィンランド

フィンランドへ行けば行くほど、自然を体験することを求める旅になってきています。フィンランドは「見に行く国」ではなく「体験しに行く国」。フィンランド人が森と湖に癒され、サウナで心と身体をととのえる。彼らと同じようにやってみると、シャイなフィンランド人もフィンランドという国も寛大に招き入れてくれる。フィンランドはそういう国なんじゃないかなぁと思います。

日々、楽しいこと、嬉しいことはたくさんあるけれど、やはり悲しいことや辛いこと、痛いことだってあります。そんなとき、まずモノに頼るのではなく、自分の心と身体がその痛みを解放する方法を知っておくべきだと思います。わたしにとってそれがサウナという存在なのかもしれません。自然の中でサウナに入るということを、子供の時からやっているフィンランドの人々の心の豊かさを日本にいるわたしたちが少しでも取り入れられたら、生活の質が変わるかもしれません。

今、少ししんどいなと思っている人。なんだかモヤモヤしている人。そしてサウナ文化をフィンランドにことをもっと知りたいとワクワクしている人。ぜひフィンランドを「体験」しに行ってほしいと思います。きっと新しい価値観や自分を見つけて日本に帰ってこられるはずです。